セブルス・スネイプ僕を見てくれは誤訳?一人称が映画と違う理由を考察

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映画『ハリー・ポッターと死の秘宝』を見るたびに感動するのがセブルス・スネイプの最後のシーン。しかし今回字幕版で見たときちょっと違和感を感じました。

というのは、原作の最後のセリフは「僕を…見てくれ…」だったはずなのに、映画では『私を見てくれ」になっていたからです。

どうしてセリフが違うのか?僕を見てくれは誤訳?と不思議に思ったのでその理由を調べたところ、英語と日本語の一人称の違いや翻訳の問題など面白いことがわかったのでご紹介します。

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スネイプの僕を見てくれは誤訳?映画と原作でセリフが違う理由

セブルス・スネイプの最後の言葉「僕を見てくれ」が出てくるのは非常に印象的なシーンで、ストーリーの山場の一つです。

スネイプはいつも偉そうな態度なので、”見てくれ”と哀願する姿など想像できませんでしたし、”僕”という若者を思わせる一人称にハッとした読者が多かったのではないでしょうか。

映画では「私を見てくれ」になっており、大人の男性にふさわしい表現になったとも受け取れます。ただ、どうしてこういう違いが生まれるのか疑問に思ったので調べてみました。

映画と原作それぞれのセリフを比較

まずは原作小説と映画の、それぞれのセリフを比較してみましょう。

小説版

オリジナル
“Look… at… me…”
日本語訳
「僕を……見て……くれ……」

映画版

オリジナル
“Look at me. You have your mothers’ eyes.”
映画字幕
「私を見てくれ。リリーと同じ目だ」
 

映画では一語一語区切るような言い方ではなく、一続きのセリフとして発声されていました。さらに、原作にはない”リリーと同じ目だ”というセリフが付け加えられています。

ハリーの顔を自分の方に向けさせたのは、母親のリリー・エヴァンズ(スネイプの想い人)と同じ色の瞳を見るためだった、という演出だと思われます。

英語の一人称はすべて”I”でバリエーションはない

英語には一人称の区別はありません。どんな人でもすべて”I”です。

日本語にはさまざまな一人称が用いられていますが、英語にはそのようなバリエーションはないのです。

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日本語のセブルス・スネイプの一人称にはいくつかバリエーションがある

日本語は世界的に見ても一人称のバリエーションが豊富な言語のようです。

男性の一人称に限っても「僕、俺、ワシ、余、自分」など様々な表現がありますし、ひらがな・カタカナ・漢字の表記によっても受ける印象が変わります。

ハリー・ポッターシリーズの原作小説からスネイプのセリフの一人称を拾ってみました。

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吾輩(わがはい)

我輩
読み方:わがはい
別表記:我が輩

男性が用いる一人称。多分に尊大さを含んだ表現。

Weblio辞書

現代の日本で常に自分を”吾輩”と呼んでいる人は、デーモン小暮閣下ぐらいではないでしょうか。アニメでも『ケロロ軍曹』のケロロなど、ごく限られたキャラクターのみが使用する呼称です。

翻訳を担当した松岡さんは、最初からハリーと対立関係にあったスネイプを、特にアクの強いキャラクターとして印象づけたかったのでしょうね。

第一作の『ハリー・ポッターと賢者の石』で初登場したときから、スネイプは自分を”吾輩”と呼んでいます。死喰い人に対しても、ホグワーツの同僚に対しても使っています。

私(わたし)

主に『不死鳥の騎士団』『死の秘宝』などでスネイプがダンブルドアと二人きりで話をするときや、ヴォルデモートとの会話の一部で”私”を使っています。

生徒たちの前では偉そうにしていても、さすがに上司や自分より力のある魔法使いの前では慎みある態度をとる男、という抜け目ない印象を受けます。

私め(わたくしめ)

『死の秘宝』でスネイプが亡くなる直前、ヴォルデモートと会話する際に使っています。

「俺様の使った杖が二本とも、ハリー・ポッターを仕損じたのはなぜだ?」

「わーー私めには、わかりません、わが君」

『ハリー・ポッターと死の秘宝 下巻』

何というか、支配者におもねる忠実なる部下という趣です。

ご主人さま、何とぞ…みたいな少々卑屈な感じもあるので、個人的には”私”のほうがいいと思います。翻訳でちょっと脚色しすぎかなと。

僕(ぼく)

『謎のプリンス』で特に多く見られますが、ホグワーツ時代やそれ以前のスネイプは”僕”を使っています。いかにも少年らしい雰囲気で、いじめられキャラにも合っていると思いました。

小説と映画のセリフが違う理由

これは個人的推測ですが、映画でスネイプを演じたアラン・リックマンさんの雰囲気を考えると、突然”僕”と言わせるのには無理があると考え、日本語字幕を”私”にしたのでは。

そもそも『死の秘宝』のスネイプ最後の言葉をどう訳すか、小説を翻訳した松岡さんはかなり悩んだようですね。

原作小説にハリーと一瞬目があうという描写があるので、その時リリー・エヴァンズの瞳を思い出したのではないか?ということから、若かりし頃を思い出しハリーの瞳を通じてリリーに語りかけるスネイプを印象づけるため”僕”という一人称を使ったのだろうと思いました。

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僕を見てくれは誤訳?!ハリーポッターの日本語翻訳には批判が多い

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今回調べてみて初めて知ったのですが、松岡佑子さんの日本語訳には表記ゆれ(同じ意味の用語の表現や表記が統一されていない)があったり、明らかな誤訳もあるようです。

そのあたりの事情をご紹介します。

「僕を見てくれ」という訳は賛否が別れている

「僕を見てくれ」という訳は誤訳ではないかという意見があったり、賛否両論あるようです。

しかし、映画で「リリーと同じ目だ」というセリフが付け加えられているので、”僕”というリリー・エヴァンズと過ごした時代の一人称を使うことが誤訳とまではいえないと思います。映画の製作者も同じ意図で原作のセリフを読み取っていると思うからです。

スネイプは日本語小説の中で吾輩・私・私め・僕の4つの呼称を使っていますが、映画のこの場面で”吾輩”にしたらギャグですし、”私”か”僕”かといったら個人的には”私”かなと。

“Look at me.”は、「こっち向いて!」という感じで通常はその場で相手の注意を引きたいときに使う表現。

なので、「私を…見ろ…」とか「こちらを…向け…」のほうがスネイプからハリーに言う言葉としてはあり得る表現だと思います。

翻訳した松岡氏の本業は同時通訳!プロの翻訳家ではなかった

ハリー・ポッターシリーズを翻訳した松岡佑子氏はもともと同時通訳者で、プロの翻訳家ではありませんでした。亡くなったご主人から出版社を引き継ぎ、出版の勉強をして1冊目を出版。2冊目として手掛けたのが『賢者の石』だったようです(著者あとがきより)。

つまり出版社も翻訳もほぼ未経験で、手探りの状態で出版にこぎ着けたということ。情熱がなければなし得なかったことだと思いますが、第一作『ハリー・ポッターと賢者の石』の日本語訳が1999年に出版されて以来、長い間読みつがれる古典的作品になると色々指摘を受けるのも仕方ないでしょうね。

当初から日本語版と英語版の両方を読める人達の間では、日本語訳がひどいと話題になっていたようですし、私自身も20年以上経って読み直してみると「あれ?これって日本語としてどうなの?」とか「これは絶対英語に無い表現だけど、元の英語は何だったんだろう?」という文章に時折出くわします。

スネイプの一人称が4種類使われていることだけでも、一人の人物に対して無意味に過剰な演出をしているのではなどネット上で色々な意見を見ました。全く新しい人の訳で読んでみることができたら、人物の印象が変わるかもしれませんね。

ハリー・ポッターは僕を見てくれ以外にも誤訳の指摘が多い

2チャンネルや5チャンネルには誤訳を指摘して新たな訳を試みるスレッドが多数あり、現在も指摘が続いているようです。

その中でも訳が違うと印象がガラリと変わることがわかりやすかったのはこちらのページ。
絵で見るハリー・ポッター日本語版誤訳・珍訳

誤訳や表記ゆれはキャラクターのイメージを損なってしまう怖れがあると思うので、読者からの指摘には真摯に対応してほしいなと思いますが、一部が文庫版刊行の際に改訳された以外はほとんどが未修正のままだそう。

英語版が読める人はそちらでJ.K.ローリングさんの文章を愉しんでいるみたいです。原書にチャレンジしたいけれど、ちょっと自信がないなぁ…という方は、図書館で探すかkindleの試し読みなどで読んでみるといいかもしれません。

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今後も色々探してみようと思います。

セブルス・スネイプの僕を見てくれは誤訳?映画と違う理由を考察のまとめ

映画『ハリー・ポッターと死の秘宝』のセブルス・スネイプの最後のシーンは名場面です。原作のセリフは「僕を…見てくれ…」、映画では「私を見てくれ」になっています。

誤訳ではないかという指摘もあるようですが、映画では「リリーと同じ目だ」というセリフが加わり、スネイプの想い人であるリリー(ハリーの母親)の瞳を見るためだったという演出があることから、若い頃を連想させる”僕”も誤訳とまではいえないのではないでしょうか。

現在の日本語訳は誤訳や表記ゆれが多数指摘されているので、いつか新しい訳で読んでみたいものですね!これからもハリポタの世界を楽しみましょう~!

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