八咫烏シリーズのネタバレあらすじを小説第二部最新刊までサクッと解説!

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『烏は主を選ばない』がアニメ化され話題になっている八咫烏シリーズは、2024年2月現在で12冊が刊行済みで、最新刊は『望月の烏』です。

私は小説を読むのが好きなので読むのも苦ではないですが、とてもそんな時間はないし読むのがめんどくさい!という方向けに小説各巻のあらすじをサクッとネタバレ解説します。

シリーズ全体に関わる致命的なネタバレを含みます。未読・未視聴の方はご注意ください。

皆様のご参考になれば嬉しいです!

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八咫烏シリーズとは?

『烏に単は似合わない』『烏は主を選ばない』を含む八咫烏シリーズはどういう作品なのでしょうか?

松本清張賞受賞作品

八咫烏シリーズは阿部智里さん原作の和風ファンタジー小説です。

シリーズ第一作『烏に単は似合わない』は、作者が2016年に史上最年少で松本清張賞を受賞した作品です。当時は早稲田大学在学中だったというのですから、驚きですね。

その後も年1回程度のペースでシリーズの刊行が続いており、2024年2月発売の『望月の烏』までに長編10冊、短編集2冊が文藝春秋社から刊行されています。

シリーズは累計200万部を突破する大ベストセラーとなっており、2024年4月からはNHKでTVアニメが放送されています。

シリーズ一作目と二作目はコミカライズも行われており、『烏に単は似合わない』は4巻で完結済み、『烏は主を選ばない』は5巻まで発売済みです。

雪哉と若宮の物語

「八咫烏シリーズ」は、人間の姿に変身することが出来る八咫烏の一族が、異世界・山内を縦横無尽に飛びまわる、和風ファンタジー。2012年に史上最年少20歳で松本清張賞を受賞してデビューした阿部智里が毎年一冊刊行、2017年『弥栄の烏』で第一部が完結しました。平安王朝風のみやびな風俗と、日嗣の皇子・若宮と側仕えの少年・雪哉を中心とした魅力的なキャラクターたち、周到に仕掛けられた謎と、日本神話に通じる壮大な世界観をお楽しみ下さい。

八咫烏シリーズ第一部合本版解説

八咫烏シリーズは、日嗣ひつぎ御子みこ・若宮とそば仕えの少年・雪哉を軸に展開されるファンタジー作品です。

人間の姿で暮らす八咫烏が住まう場所、「山内」は神話の時代や平安朝の日本を思わせる雅やか世界

そこで繰り広げられる雪哉と若宮のやりとりはもちろん、朝廷での権力争いやお后選びをめぐる女性たちのぶつかり合いなど人間ドラマがめちゃくちゃ面白いんですよ。

1冊ずつが独立した作品としても読めるようになっていますが、シリーズ全体を通して”真の金烏とはどういう存在か?”という謎解きも進行していきます。

山内が滅びに向かっている状況の中で八咫烏たちはどうなってしまうのか?という大河ドラマ的歴史ものとしても面白く読むことができるんです。

これは自分の実感ですが、八咫烏シリーズを読み始めるとページをめくる手が止まらなくなります。すぐ次の巻が読みたくなるのでゆっくりゆっくり読むというファンもいるほどですw

新刊を読むたびに「こうきたか…!」とオセロで白黒の勢力図が入れ替わるようなどんでん返しに驚かされ、また次巻が待ち遠しくなる。この繰り返しでやみつきになります(笑)

主な登場人物

主な登場人物はこちらです。

雪哉(ゆきや)

雪哉は八咫烏シリーズの主人公のひとりです。若宮(次の帝)の近習になったことから朝廷生活に身を投じ、山内で重要な役割を果たすようになっていきます。

真の金烏である若宮に忠誠を誓っています。

最新刊『望月の烏』では山内の政治の頂点に君臨していますが、ちっとも幸せそうじゃありません。その理由は…?ぜひ原作を読んで確かめてください。

『烏は主を選ばない』から伏線が仕込まれています。

若宮/奈月彦(なづきひこ)

奈月彦も八咫烏シリーズの主役の一人で、母親は帝の側室・十六夜。藤波の宮は母親が同じ妹です。

まことの金烏(きんう)」と呼ばれる特別な存在で、今上帝の正当な後継者「日嗣の御子(ひつぎのみこ)」に即位。ふだんは「若宮」と呼ばれています。

八咫烏全体の長として特別な能力を持っており、金烏(帝)として即位しますが非業ひごうの死を遂げます。

澄尾(すみお)

澄尾は八咫烏シリーズの主要キャラクターの一人で、若宮専属の護衛を務めています。

宗家(帝の一家)の護衛を養成する勁草院を首席で卒業。剣の腕が立つイケメンですが、山烏(やまがらす)と言われる田舎の平民出身です。

長束(なつか)

長束は若宮こと奈月彦の腹違いの兄で、今上帝と大紫の御前の息子です。

当初は日嗣の御子として即位したものの、異母弟の奈月彦が真の金烏であるとされたことから退位し、出家。「明鏡院(めいきょういん)」という院号を持つ僧侶となっています。

表向きは奈月彦と対立するものの、実際には深い絆で結ばれています。

大紫の御前(おおむらさきのおまえ)

大紫の御前は帝の正室、皇后を表す呼び名です。貴人の名前を接呼ぶのをはばかって、わざと遠回しな呼び方をするわけですね。

帝と皇后だけが身につけられる禁色が紫色であるため大紫の御前と呼ばれています。

『烏に単は似合わない』に登場する大紫の御前は若宮の異母兄・長束の実母で、仮名を夕蝉といいます。

藤波の宮

藤波の宮は、若宮こと奈月彦の妹で、女性的な美男子である若宮に懸想しています。

幼い頃に母親を亡くしたこともあって愛情に飢えているせいか、見た目も精神的にも幼さが目立ちます。

あせびの母・浮雲が羽母(うば=乳母)だったため、あせびを姉のように慕っています。

今上帝/捺美彦(なつみひこ)

捺美彦は山内を統べる宗家の頂点に立つ金烏代(帝)です。

大紫の御前との間に長束、十六夜(いざよい)との間に奈月彦、藤波の宮を授かりました。

あせびの母・浮雲がお気に入りだったものの子供を授かることなく浮雲が他界。

あせび

八咫烏シリーズ第一作『烏に単は似合わない』のヒロインで、東家の二ノ姫であり、若宮の妃候補として登殿します。

2作目の『烏は主を選ばない』からは全く登場していませんでしたが、10作目『追憶の烏』で鮮烈な再登場を果たします。

真赭の薄(ますほのすすき)

真赭の薄は西家の姫で、シリーズを通して活躍する主要キャラクターの一人です。

真赭の薄は父親が若宮の母と兄妹関係にあるため、若宮とはいとこ同士です。

浜木綿(はまゆう)

浜木綿(はまゆう)は南家出身の姫で、八咫烏シリーズの主要キャラクターの一人です。

現南家当主の養女になっていますが、実は若宮の母・十六夜殺害を企てたとされる先代当主の娘でした。

白珠(しらたま)

白珠(しらたま)は北家の三の姫です。

北家当主・玄哉公の孫で、雪哉のいとこにあたります。

路近(ろこん)/南橘の路近(みなみたちばなのみちちか)

路近(ろこん)は長束の護衛であり、明鏡院所属の神官です。

南家の分家の中でも名家とされる南橘の当主の家に生まれ、出家前は名を路近(みちちか)と言いました。

人を殺すことにためらいがなく、その強さは山内最強と言っても過言ではありません。外見からは知性を感じさせないのですが、実は恐ろしく頭が切れる男です。

敦房(あつふさ)

長束の側近を務める優秀な文官です。

若宮暗殺に関わったことから『烏は主を選ばない』で捕縛され、以降物語から姿を消しています。

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八咫烏シリーズ原作小説のネタバレあらすじ

『烏に単は似合わない』から始まる八咫烏シリーズの雪哉と若宮の関係を中心に、原作小説のあらすじをネタバレありで解説します。

第1巻「烏に単は似合わない」からすにひとえはにあわない

松本清張賞を最年少で受賞、そのスケール感と異世界を綿密に組み上げる想像力で選考委員を驚かせた期待のデビュー作は、壮大な時代設定に支えられた時代ファンタジー! 人間の代わりに「八咫烏」の一族が支配する世界「山内」では、世継ぎである若宮の后選びが今まさに始まろうとしていた。朝廷での権力争いに激しくしのぎを削る四家の大貴族から差し遣わされた四人の姫君。春夏秋冬を司るかのようにそれぞれの魅力を誇る四人は、世継ぎの座を巡る陰謀から若君への恋心まで様々な思惑を胸に后の座を競い合うが、肝心の若宮が一向に現れないまま、次々と事件が起こる。侍女の失踪、謎の手紙、後宮への侵入者……。峻嶮な岩山に贅を尽くして建てられた館、馬ならぬ大烏に曳かれて車は空を飛び、四季折々の花鳥風月よりなお美しい衣裳をまとう。そんな美しく華やかな宮廷生活の水面下で若宮の来訪を妨害し、后選びの行方を不穏なものにしようと企んでいるのは果たして四人の姫君のうち誰なのか? 若宮に選ばれるのはいったい誰なのか? あふれだすイマジネーションと意外な結末――驚嘆必至の大型新人登場!

『烏に単は似合わない』阿部智里

シリーズ1作めの『烏に単は似合わない』は、あせびが語り手となって物語が展開していきます。

天真爛漫でおっとりしたお嬢様の語りに共感し、あせびは若宮の后になれるのか?他のお姫様たちもがんばって!とドキドキしながら楽しく読み進めていけます。

若宮はどうしてお姫様たちのところに来てくれないのよ!と憤りを感じながら読み進めると、最後のシーンでようやくでてきて健気なお姫様たちにズケズケと本音を叩きつけますw

ただ、若宮からは一人ひとりの姫への思いやりも感じられるのでほっとしました。

若宮の言葉を読むうちに物語の見え方が180度変わるどんでん返しが用意されています。

実は若宮のほうが誠実で思いやりがあり、あせびがとんでもなく不誠実な語り手だったことが判明するんです。

ポイントは、あせびが文通していた男性が3人いたこと。一人は若宮、一人は斬り殺され、もう一人が問題の人物で将来的にあせびの夫となります。

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第2巻「烏は主を選ばない」からすはあるじをえらばない

八咫烏が支配する世界山内では次の統治者金烏となる日嗣の御子の座をめぐり、東西南北の四家の大貴族と后候補の姫たちをも巻き込んだ権力争いが繰り広げられていた。賢い兄宮を差し置いて世継ぎの座に就いたうつけの若宮に、強引に朝廷に引っ張り込まれたぼんくら少年雪哉は陰謀、暗殺者のうごめく朝廷を果たして生き延びられるのか……?

『烏は主を選ばない』阿部智里

第1巻『烏に単は似合わない』と同じ時系列の出来事若宮の近習・雪哉の視点で描く物語です。

単がほぼ女性たちの物語だったのに対して、こちらは男性たちの物語になっています。

「垂氷郷(たるひごう)のぼんくら次男」と呼ばれる雪哉は、北領の垂氷郷郷長家の次男坊。

兄弟のうち雪哉の母親だけが高貴な血筋だったため、お家騒動が起きて自分の居場所がなくなることを怖れボンクラのふりをしています。

実は非常に頭がよく、自分の立場を脅かす者には制裁を加える腹黒キャラなんですが、それを若宮の兄・長束に見抜かれ若宮の近習に(笑)

様々な思惑が渦巻き誰もが若宮の即位を阻むために動く朝廷で、雪哉は本来の才能を発揮し次第に若宮を信頼していきます。

しかし自らの出自が利用されたことに失望し、故郷の垂氷に戻ります

若宮に対する「僕の知らない所、僕と関係のない所で、どうぞ勝手に死んでください」という最後の一文がシリーズの重大な伏線になっていて、回収はシリーズ8作めの『追憶の烏』です。

若宮と澄尾、雪哉の3人のわちゃわちゃした感じが楽しく、若宮が雪哉に投げてよこす砂糖をまぶした金柑の甘酸っぱさとほろ苦さが作品そのものの味わいになっています。

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第3巻「黄金の烏」きんのからす

物語は世継ぎの若宮と、郷長のぼんくら(とされる)次男坊が、危険な薬〈仙人蓋〉の探索にでかけるところからはじまる。不穏な気配を漂わせた旅先で、何と彼らが出会ったのは、人を喰らう大猿だった! 壊滅した村の中でたったひとり残されたのは、謎の少女・小梅。――いったい僕らの故郷で、なにが起こっているのだろう?
山内の危機に際し、若き主従は自らの危険を顧みず、事件のヒントを持つと思われる暗黒街の支配者のもとに出向く。そこで雪哉に課されたのは、未知の隧道の先にある物を持ち運ぶことだった。深い暗闇の底での冒険の末、雪哉が見たものとは?
スペクタクル満載の本作は三部作の最高傑作にして、新たな展開をも予感させる意欲的な書き下ろし大作。「世界に通じるファンタジー作家」を目指す、阿部智里の才能にますます心奪われる一冊となっている。

『黄金の烏』阿部智里

第3作『黄金の烏』のタイトルにもあるように、この巻では「金烏(きんう)」とは何か?が明らかになり、舞台が山内の外側に広がります。

山内の外側には人間界が広がり、その境界には人喰い猿の領域があります。

一体人喰い猿はどこから山内に入り込んでくるのか?そして、全滅した村でただ一人生き残った少女・小梅の正体は果たして……?

小梅とクズな両親(猿を山内に引き込んだ)との関係が、血がつながらなくてもお互いを思いやる雪哉の家族と見事に対照的で、雪哉が小梅を理解できないのも無理ないなと思いました。

人食い猿が不気味すぎて、個人的に非常に緊張感を感じながら読んだ作品です。

地下街の盟主・朔王(さくおう)や親分衆のリーダー・鵄(とび)など新キャラも登場。彼らの存在もある意味伏線になっていて、シリーズ7作目の『楽園の烏』以降重要な役割を果たします。

自分に忠誠を誓う雪哉の言葉に対する、若宮の「その言葉を待っていたと、そう言った真の金烏は満足げにーーそして、どこか寂しげに笑ったのだった。」という最後の一文が不穏すぎるのですが

案の定、シリーズ8作目『追憶の烏』の重大な伏線になっていました……。

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第4巻「空棺の烏」くうかんのからす

八咫烏の一族が支配する世界山内で、宗家を守るのは山内衆と呼ばれる上級武官。勁草院という養成所で厳しい訓練がほどこされ、優秀な成績を収めた者のみが護衛の栄誉に与る。平民の茂丸、下人の千早、大貴族の明留、そして武家の雪哉。生まれも育ちも異なる少年たちは、勁草院の過酷な争いを勝ち抜き、日嗣の御子を護る武人になれるのか――。

『空棺の烏』阿部智里

シリーズ4作目『空棺の烏』は学園ものです。さまざまなバックグラウンドを持つ学生たちが勁草院の寮で暮らしながら心身を鍛える様子はさながらハリー・ポッターや防衛大学校のイメージですね。

雪哉にとって唯一心を開ける友となった茂丸、身体能力抜群の千早、大貴族のおぼっちゃま明留など友人たちとの出会いと成長が描かれます。

しかしそれらの出会いさえも雪哉によって仕組まれたものだったことがわかり、読んでいて背筋が寒くなる感じがしました。

周囲の大人たちを自分の手のひらのうえで転がす雪哉の狡猾さがえげつなかったです。

残り100ページほどのところで話が終わりそうになり、あれっと思ったのもつかの間、そこから雪哉がかわいがっていた後輩・治真が猿にさらわれ物語が一気に緊迫感を増します。

神域で子猿と会ったことで記憶の一部を取り戻した若宮は、禁門の外に放置されていた先代の真の金烏の遺骸を山内に持ち帰ります。棺に遺骸を収めると水があふれ出すラストシーンが印象的です。

他にも勁草院の院士(先生)である清賢や翠寛など、シリーズ9作目『烏の緑羽』で再登場するキャラの伏線が細かく張り巡らされていて、何度も再読したくなる巻です。

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第5巻「玉依姫」たまよりひめ

八咫烏の支配する異世界「山内」の謎が明らかに
高校生の志帆は、かつて祖母が母を連れて飛び出したという山内村を訪れる。そこで志帆を待ち受けていたのは、恐ろしい儀式だった。人が立ち入ることを禁じられた山の領域で絶体絶命の少女の前に現れた青年は、味方か敵か、人か烏か? ついに八咫烏の支配する異世界「山内」の謎が明らかになる。荻原規子氏との対談収録。

『玉依姫』阿部智里

シリーズ5作めは現代から始まります。主人公の志帆は女子高生で、叔父にそそのかされ山神への御供として山内の神域に入り、山神を育てることになります。

志帆は一度は神域から逃走するものの、天狗に捕まったことをきっかけに山内に戻り、山神の母親・玉依姫(たまよりひめ)として成長していきます。八咫烏シリーズ版ボーイ・ミーツ・ガールですね。

玉依姫伝説には、自分が育てた子どもと結婚するエピソードがあるそうで、物語もその方向へと進んでいきます。

山神の怒りの雷に触れて烏たちが焼け死ぬシーンでは、誰がどうなったのすごく気になるのですが、次巻『弥栄の烏』まで詳細は待たなくてはなりません……。

山内で絶対的な権力を持つ奈月彦が、山神や猿からは過去の裏切りをネタにさんざん言葉で痛めつけられる立場なのがびっくりでした。

八咫烏と人間との交易の仲立ちをする大天狗も人間の姿で登場し、若宮の金烏としての記憶が少しずつ戻ってくることから、山神と猿と八咫烏の関係や山内の成り立ちが明らかになります。

初登場時は異形の生き物としてホラーチックに登場する山神ですが、志帆に名付けられたことをきっかけに普通の人間らしくなり、さらに神性を獲得していく様子が面白かったです。

この巻は作者が高校生の頃に最初に書いた山内の物語なんだとか。すごすぎますね!

第6巻「弥栄の烏」いやさかのからす

松本清張賞史上最年少受賞のデビュー作『烏に単は似合わない』から一巻ごとに 読者を魅了して成長してきたシリーズの第一部完結の第6巻。
八咫烏の一族が支配する異世界・山内を舞台に繰り広げられる、お后選び・権力争い・外敵の進入。大地震に襲われた山内で、100年前に閉ざされていた禁門がついに開かれた。 崩壊の予感が満ちる中、一族を統べる日嗣の御子・若宮は、失った記憶を取り戻すことができるのか。そして、人喰い猿との最終決戦に臨む参謀・雪哉のとった作戦とは――。 一巻から周到に張り巡らされてきた伏線がすべて回収され、この世界の大いなる謎が驚愕とともに明かされるクライマックス。 大人気キャラの受難、神秘の謎とどんでん返しに驚愕した後に、 未知の感動が味わえる堂々完結の一冊。

『弥栄の烏』阿部智里

第一部完結となるシリーズ6作目では、雪哉が山内の全軍を指揮する作戦参謀となって猿の殲滅かいめつ作戦を実行に移します。

猿は八咫烏を食糧として狙っていたので、本来なら猿のすみかがある神域に近い中央ではなく、東西南北の領内にちらばって住むほうが危険が少ないんです。

しかし貴族たちはこれまでの暮らしを捨てることに難色を示し、猿の脅威を軽く考えていたこともあって中央に残ることを主張。

雪哉は若宮に詳細を伏せたまま、貴族たちが暮らす凌雲宮(りょううんぐう)を囮として利用する計画を立案し、実行しました。

山神の怒りに触れて茂丸が焼死してしまった哀しみと怒りを猿に向けた印象ですね。そのためには手段を選ばず、仲間の命を危険にさらすこともためらわない非情な雪哉…。

正義の名のもとに大切な人たちを守るためには相手が子供であっても容赦なく殺す、そういう人間の世界の縮図を見せられている感じがして何ともいえない重たい読後感があります。

茂丸を失った今、もはや誰も雪哉を止めることができなくなってしまった……!と読んでいて本当に悲しくなりました。

結果として猿を殲滅できたものの、囮として利用されたことを知った真赭の薄と雪哉との間には決定的な溝が生まれます。

そして若宮の意向を無視したこの行動こそが、後に『追憶の烏』で訪れる決定的な亀裂の始まりではないかと個人的には考えています。

『空棺の烏』で子猿を斬り捨てたときわずかに動揺したり、ゆりかごの中の紫苑の宮(若宮と浜木綿の娘)を見て涙を流す雪哉には、まだ若宮と同じ方向を向くチャンスがあったはずなのですが…。

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外伝1「烏百花 蛍の章」からすひゃっか・ほたるのしょう

異世界「山内」の壮大な歴史の流れの中、主要人気キャラクターたちは どんな風に育ち、一方でどんな関係を結び、事件の裏側でなにを思っていたのか。 美貌の姫君へのかなわぬ想い、愛を守るための切ない大嘘、 亡き人が持っていた壮絶な覚悟、そして、「命をかけた恋」…… 本編では描かれなかった、「恋」の尊い煌めきが満ちる魅惑の短編集。 2020年ついにスタートした第二部『楽園の烏』の前に必読!の書。

烏百花 蛍の章』阿部智里

本編がどんどん重苦しい内容になっていきますが、この短編集は明るい雰囲気で楽しく読めるエピソードが収録されています。

「ゆきやのせみ」だけは恋愛とは全く関係ない内容ですが、私は大爆笑しましたw

短編の内容をひとことでまとめると…

  • しのぶひと(澄尾が真赭の薄の幸せを願いやらかしてしまう話)
  • すみのさくら(若宮と浜木綿の出会い)
  • まつばちりて(大紫の御前の庇護を受けた落女の生きざま)
  • ふゆきにおもう(雪哉誕生秘話、母・冬木と梓、雪正の話)
  • ゆきやのせみ(雪哉が蝉を食べる話)
  • わらうひと(澄尾が真赭の薄への思いを語る話)

どれもかなり楽しめる内容なんですが、私のおすすめは「しのぶひと」と「わらうひと」。

特に、不器用な澄尾のまっすぐな愛の告白が刺さる「わらうひと」は何度も読み返しています。おすすめです。

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八咫烏シリーズ第二部はどうなる?その後のネタバレあらすじ

八咫烏シリーズ第二部の内容はどうなるのでしょうか?第一部のその後のあらすじをネタバレ解説します。

第7巻「楽園の烏」らくえんのからす

新宿の片隅でたばこ屋を営む青年・安原はじめ。7年前に失踪した父から「山」を相続した途端、「山を売ってほしい」という依頼が次々と舞い込み始める。そこへ現れたのは、“幽霊”を名乗る美しい女。山の秘密を知るという美女に導かれ、はじめはその山の“中”へと案内される。 その場所こそは、山内と呼ばれる異界。人の形に変じることのできる八咫烏の一族が統治する世界だった―― 猿との大戦(『弥栄の烏』)より20年の時を経て、物語は現代の風景から始まる。 舞台は次第に「山内」へと移り、動乱の時代を生き抜いた八咫烏たちの今、 そして新たなる世代の台頭が描かれる。 第1部以上のスケールで展開される、傑作異世界ファンタジー。

『楽園の烏』阿部智里

シリーズ7作目の『楽園の烏』は、5作目の『玉依姫』同様現代日本から話が始まります。

雪哉は博陸候雪斎(はくりくこうせっさい)として総理大臣的地位につき、金烏に全権を委任され山内の実権を握っています。

「どうしてこの山を売ってはならないのか分からない限り、売ってはいけない」という養父の遺言の真意を確かめるため山内に来た安原はじめは、「ここは楽園か?」と行く先々で人々に聞いて回ります。

護衛に指名した山内衆・頼斗をはじめとする誰もが「楽園です」と即答するものの、はじめはそれが真実かを自分の目で見極めようとします。

亡くなった茂丸の妹に「お約束します。必ず山内を、あなた方が安心して、幸せに暮らせる、楽園のような場所にしてみせます」と誓った雪哉。

はじめが目にする雪哉が作り上げた山内は、本当に楽園なのか…?

物語が進んでいくにつれてフィクサーというかダークヒーローとして立ち回る雪斎の姿に胸が塞がるような重苦しい感覚が強くなっていきます。

「地獄のここが楽園だ」とうそぶく雪斎は見たくなかった……!

”幽霊”の正体は一体誰なのか?はじめの父・朔王はなぜあんな遺言を残したのか?気になることがいっぱいです。

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外伝2「烏百花 白百合の章」からすひゃっか しらゆりのしょう

とんでもない意気地なし、と噂の少年・雪哉に剣の指導を頼まれた 腕に覚えのある市柳は、おびえる雪哉に自信満々で打ち込むが、 まもなく違和感を覚え始める――(「ふゆのことら」) 貴族の少年たちが、父の跡を継いだ職人が、全身全霊で守りたい ものとは何か。 山内に生きる人々の幸せを誓った彼、そして、権力闘争のはざまに育つ姫君の 心の奥にある思いとは。 読者の胸を刺し貫く魅力でベストセラーとなった異世界ファンタジーシリーズ、 震撼の第二部へと橋をかける必読の8編。

『烏百花 白百合の章』阿部智里

シリーズの表舞台で活躍するキャラだけでなく、脇役としてひっそり山内で暮らす人々の暮らしや想いも感じられる短編集です。

短編の内容をまとめると…

  • かれのおとない(雪哉が茂丸の妹に会いにいく話)
  • ふゆのことら(市柳が雪哉にコテンパンにされる話)
  • ちはやのだんまり(千早と妹の結の話)
  • あきのあやぎぬ(西家当主・顕と19人の嫁たちの話)
  • おにびさく(鬼火灯籠の職人の話)
  • なつのゆうばえ(大紫の御前となる以前の夕蝉の話)
  • はるのとこやみ(あせびの出生秘話・浮雲に懸想した楽士の話)
  • きんかんをにる(若宮が紫苑の宮と一緒に金柑を煮る話)

どれも短いのに読みごたえがあって好きなんですが、オチが最高なのは「ちはやのだんまり」です。

「おにびさく」は鬼火灯籠を作る職人の話ですが、実は大紫の御前が藤波の宮のために灯籠を作らせた話かも?と思う部分があります。

「きんかんをにる」であの金柑を紫苑の宮から食べさせてもらい、ちょっと声を詰まらせる雪哉。もうこんなに仲睦まじい様子は見られないと思うと、とても寂しくなります。

第8巻「追憶の烏」ついおくのからす

猿との大戦後、正式に即位した金烏・奈月彦。山内の存続のため、大貴族四家に協力を請いつつ、娘の紫苑の宮を自らの跡継ぎとするべく動き始める。 下界への留学を控えた雪哉は、美しい夜桜の下で紫苑の宮としばしの別れを惜しむのだった。 滅びゆく山内の、新しい時代が始まろうとしていた――外界で忙しい日々を送る雪哉にある日、信じがたい一報が。 『楽園の烏』に至る20年間になにがあったのか? 戦慄の真実がいま明かされる。 シリーズ最大の衝撃作!

『追憶の烏』阿部智里

『追憶の烏』では、雪哉が雪斎になるまでの出来事が描かれます。

澄尾と真赭の薄に子供が生まれたんだ、紫苑の宮と雪哉が夜桜を見に行くシーンキレイだな、人間界に留学した雪哉は見事な社畜で笑えるwとここまでは楽しく読めるのですが…

若宮の突然の死によって、全てが狂いはじめます。浜木綿と意見が対立した雪哉は、若宮の遺言に期待するものの「すべて皇后のよきように」との内容に呆然自失の状態になります。

自分の忠誠心が若宮自身ではなく真の金烏という立場に対するのものだった、と過ちに気づいた雪哉。自分自身をあざ笑うかのように腹の底から激しく笑うシーンが辛すぎました。

紫苑の宮が雪哉を選ばなかったことで、雪哉は若宮を殺した四家の側につき、博陸候となる道を歩き始めます。

哀しいのは、雪哉が四家側につくであろうことも含めて四家貴族の思惑どおり事が進んだことですね。

紫苑の宮を日嗣の御子の座につけるよう主張し桜花宮を占拠した浜木綿と紫苑の宮は、謀反人として雪哉に追われる身となり姿を消しました。

若宮死亡から10年以上たったのちに雪哉の前に現れた、澄生(すみき)と名乗る若宮にうり二つの女性は、紫苑の宮が成長した姿なのか?それとも澄尾と真赭の薄の娘なのか?謎が深まります。

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第9巻「烏の緑羽」からすのみどりば

「なぜ、私の配下になった?」 生まれながらに山内を守ることを宿命づけられた皇子。葛藤と成長、彼らのその先には――

『烏の緑羽』阿部智里

なぜ『烏の緑羽』は長束や路近、翠寛の話なんだ!?と読んでいる途中は疑問しかなかったのですが、最後にすべてがつながります。

八咫烏シリーズではこれまで主要キャラとして活躍してこなかった長束・清賢・路近についてそれぞれ1章ずつ、翠寛については2章を割いてこれまでの生きざまを深堀りしている巻です。

シリーズ4作目の『空棺の烏』では悪役に見えた翠寛ですが、「糞野郎」と路近を殴ったり、ぼったくられた長束を叱りつけたりなど苦労人だった過去や思いやりあふれる姿が描かれていて大好きになりました。

また、路近もただの殺人者ではなく、路近なりの論理のもとで行動していることがわかって面白かったです。

誰も負かすことができない路近を真正面から負かしたのが朔王だったこと、清賢の右腕がないのは朔王から路近を守るためだったことなど意外な事実も明らかになります。

改めて『空棺の烏』を読み返して、『烏の緑羽』で回収される伏線が事細かに張り巡らされていたことがわかりました。

若宮が亡くなって6年後、長束のもとに姿を現した男と美しい娘の姿が最後に描かれるのですが、男は翠寛だとして、美しい娘は誰だったのでしょうか…?

8作目の『追憶の烏』の最後に澄生が貢挙(こうきょ、朝廷の役人の任用試験)を受験したのは若宮死亡から10年後でした。空白の4年の間、長束のもとで男と娘は何をしていたのでしょうか。

本作のラストで「戦うこと以外に、一体、何がありましょう」と宣言する娘は澄生なのか?紫苑の宮か?「非常に賢い」ということは澄生っぽいですが、真実を早く知りたいですね!

第10巻「望月の烏」もちづきのからす

絶対権力者・博陸侯の後ろ盾のもとで、 新たに異世界〈山内〉を統べる金烏代となった凪彦。 その后選びのため、南北東西の大貴族の家から選ばれた、 四人の姫君たちが、宮中での〈登殿の儀〉へと臨む。 しかし下級官吏として働く、絶世の美姫の存在が周囲を――。

『望月の烏』阿部智里

新たな金烏代・凪彦(なぎひこ)のもとで桜花宮への登殿が行われます。『烏に単は似合わない』から1周回ったお后選びですね。

主人公は凪彦と、女を捨てて朝廷の落女(らくじょ)となった澄生(すみき)です。雪斎は澄生=紫苑の宮が山内への復讐のため戻ってきた姿、と考えています(真実はわからないままです)。

澄生はあまりにも美しいため”傾城の落女”(けいせいのらくじょ、国の行く末を危うくする男として生きる女性)と呼ばれており、先代の金烏・奈月彦に瓜二つであることから朝廷で注目を集めます。

かつて千早の知り合いが無実の罪で馬にされた事件を皮切りに、澄生は山内の真実を調査。隠されてきた格差や差別を凪彦に伝えました。

凪彦の父親は捺美彦(なつみひこ)、母親はあせびなので、凪彦は長束や亡き若宮と藤波の宮とは異母兄弟です。まさかここであせびが登場するとは思いませんでした…。

凪彦は両親に似ず(?)まともな思考の持ち主で、澄生の影響を受け山内の現実に向き合おうとするのですが、最終的には博陸候が金烏を直接脅迫するというえげつないやり方で阻止されてしまいます。

おそらく今作は『楽園の烏』で凪彦について”多少やんちゃなところもあったが”とコメントされていたやんちゃ部分ではないかと思います。

澄生の美しさを利用し、政治に口出しできぬよう登殿させようと画策する雪斎が本当に腹黒で、悲しくなります。

しかし登殿した姫宮たちのうち幾人かは密かに結託して長束に協力し、雪斎に対抗しようとしています。

金烏代さえも自分の思い通りにできる権力を手に入れた雪哉ですが、「望月は、あとは欠けるしかないのにな」とつぶやく姿が痛々しいです。

雪斎との戦いからいったん身を引く決断をした澄生が、次にどんな手を繰り出すのか楽しみです!

作品名の原作小説ネタバレあらすじまとめ

作品名の原作小説のあらすじを、若宮と紫苑の宮、雪哉の軌跡を中心にまとめました。

八咫烏シリーズは12冊が刊行済みですが、まだまだ続きそうな気配です。

本当に面白いので、いつまでも終わってほしくないような、終わってくれないと困るような。こんな感覚はハリー・ポッター以来のことですね。

来年の次巻発売まで、もう一度シリーズを読み返してみようと思います。

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